片付けから始まった 奇跡の連鎖

空き家の利活用促進のため、地域おこし協力隊が始めた片付け

地域の方とのつながりが思わぬ広がりへ





片付けを空き家活用の突破口に


 桜木町通りの入口に、かつて「つつみ洋品店」という店があった。店主が急逝し、遠方に住む親族が相続したが片付けに来ることもままならず、数年が経過。相続時に空き家となり、放置されてしまう典型的なパターンだ。

 これまで空き家の利活用促進に取り組んできて、活用に踏み切れない理由がいくつか浮き彫りになっていたが、その一つが片付け。物量が多すぎてとても手に負えないが、業者に頼んでまで片付けるのも億劫。そして固定資産税が安いため、活用するのに手間と費用をかけるくらいなら放置した方がまし、となってしまうのだ。しかし、空き家を放置することは空き家オーナーが保有する不動産だけでなく、エリア全体の価値も下げることを意味する。老朽化した空き家の一部が飛んで通行人に怪我をさせるような事態になれば、多額の賠償金を払うことにもなる。いいことなど何も無いのだ。

 空き家を片付けて使う、という事例を作ろうと思い立ち、以前からコンタクトをとっていたつつみ洋品店の相続人に片付けても良いか確認したところ、快諾してもらえた。建物の中を確認すると、店内も住居部分も店主が住んでいた時のまま、商品や生活用品で足の踏み場もなかったが、ひとまず協力隊の二人で店舗部分を片付けることに。

片付ける前の店内は物が溢れ、足の踏み場も無かった



 ゴミの処分費を捻出するため、店内の在庫品で売れそうなものは店先に並べ、格安で販売しながら片付けた。近所の方々が「何してるの?」と声をかけてくれ、この洋品店の思い出や、カラオケが大好きだった店主のおばあちゃんについて教えてくれた。こんなもの欲しい人いるんだろうか、と思うようなものでも喜んで買っていく人がいて、まさに捨てる神あれば拾う神あり。何度も通ってくれる方から、空き家の情報を教えてもらうこともあった。

片付けてプチリフォームした後は「ツツミベース」に改名し、無料休憩所としてオープン



近所の方のひと言から人気店が誕生


 ある時、つつみ洋品店の向かいにある空き家のオーナーだという近所の方から、「これも借りたい人いるかなぁ」と話があった。昔たい焼き屋さんだった名残で通り側に厨房スペースがある、感じのいい物件だった。水道や電気など設備系を一新しないと使えなさそうだった事もあり、家賃は地代に年間の固定資産税を月割りにした金額を加えた程度に抑え、借主に全て改修費を負担してもらう方式にした。これまで空き家のオーナーは使っていない建物にひたすら地代を払ってきたわけだが、低額でも人に貸せば少しプラスになる。しかも自分は1円も投資せずに、借主が建物を綺麗に改修してくれる。自分の好きなように改修したい借主にとっても、変にリフォームされた物件に高い家賃を払うより、低い家賃で好きに改修できる方がいい。SNSとWebで情報を発信したらものの2日で借りたいという人が現れ、今や大人気のチョコレート工房となっている。


人とのつながりが奇跡の連鎖に


 現在つつみ洋品店は、地域の方々の無料休憩所兼レンタルスペースとして「ツツミベース」に名を変え無人でオープンしている。テイクアウトしたものを飲食することも可能だ。また、店舗を持たずに営業している方に低額でこの場所をレンタルし、販売や告知に利用してもらうこともしている。空き家の片付けをしてみたら思わぬ人とのつながりができ、別の空き家も素敵なお店になった。これからも桜木町通りがどう変わって行くのか、楽しみだ。

ツツミベースはチャレンジショップとしてスペースの貸出しも行っている


ツツミベース

住所  長野県須坂市北横町1314

OPEN  9:30〜17:00/定休日 土日祝(不定休あり)

Instagram https://www.instagram.com/tsutsumibase/?hl=ja

※掲載内容は2021年4月9日現在の情報です。表示価格・内容は予告なく変更になる場合がございます。


◎売る・貸すなど須坂市内にある空き家・空き店舗の活用をお考えの方限定で、片付けのお手伝いをしています。詳しくは須坂市地域おこし協力隊までお問合せください。

TEL 026-405-2740(コミュニティスペース 結)



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