戦国時代から伝わる 民話のお地蔵さまと桜を訪ねて

須坂市豊丘に伝わる不思議なお地蔵さまの民話。現在も人々の信仰を集めるお地蔵さまの姿を拝むことができる。さて、そのお話とは?

根回り約6m、梢の広がりは15mにおよぶアズマヒガンは推定樹齢約430年と須坂で最古(市指定天然記念物)



首なし地蔵さんのお話


戦国時代、灰野村(現在の須坂市豊丘)に武士の一家が住んでいたが、父親が戦で他界。一家には母親・娘・乳母だけが取り残され、細々と暮らしていたが母親が重い病気にかかってしまう。献身的に看病するも病状は悪くなるばかりだったが、村人から村の奥に木曽義仲も願掛けしたというご利益のある地蔵尊が居られるから、願掛けしてはどうかと教えてもらい、娘と乳母は七日間の断食をして祈り続けた。


七日目の晩、かねてから様子をうかがっていた山賊が娘の着物を奪おうと襲った時、娘が抵抗したのに動揺した山賊は娘の首をはねてしまう。恐ろしくなった山賊が逃げた後、気が付いた乳母がお地蔵さまに娘を助けてほしいと叫んだところ、お堂の奥で何か声がした。振り返ると娘の体は元に戻り、生き返っていた。そして、脇には首を切られたお地蔵さまが横たわっている。

お地蔵さまが身代わりになってくれたことに感謝し、そのまま眠ってしまうとお地蔵さまが夢に現れ、娘の父親は戦でたくさんの人の命を奪ったため、母親を助けることはできない。しかし、信心深さにより娘の命は救ってあげたと告げた。お告げの通り、母親はほどなくして他界したが、娘はその後尼寺へ入り、亡くなった人の供養につとめて一生を終えた。


民話に出てきたお堂は火事で焼失したが、数年後村の鍛冶屋が土の中から胴体だけのお地蔵さまを見つけ、小さなお堂を建てて奉ったという。首なし地蔵、延命地蔵などと呼ばれ、現在は豊丘地域公民館そばの旧園里学校内で地域の人々に親しまれている。



明治時代の擬洋風建築・旧園里学校内に安置されたお地蔵さま



延命地蔵堂の桜


お堂があったとされる場所に咲く一本桜は推定樹齢約四百三十年と言われ、ちょうど民話の時代と重なっている。民話に思いを馳せながら見上げる桜はまた一味違ったものになりそうだ。延命地蔵堂の桜は「豊丘五大桜」のうちの一つで、他にも見事な一本桜が楽しめるスポットがある。それぞれ違った美しさを楽しむのもおすすめ。




豊丘地域公民館

住所 長野県須坂市大字豊丘1074-1

TEL 026-245-9768

The secrets of SUZAKA

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