まるで美術館!  古き良きものを愛する呉服店

保存修景に情熱を注いできた呉服店は美の宝庫だった

江戸期の土蔵はじめ、店舗、奥座敷などは登録有形文化財に指定されている



善光寺地震がきっかけで須坂へ


旧須坂町の中心で呉服店・綿幸を営む中野家。代々本陣(江戸時代以降の宿場で、大名や旗本、幕府役人などの宿泊所として指定された家)を務めた名家であったが、分家して長野・善光寺村(当時)で呉服店を営んでいた。1847(弘化4)年の善光寺地震で店が倒壊する被害を受け、お嫁さんの実家(近所にある山下薬局)がある須坂へ移転したのだった。

明治初期建造の下店



美しいものたちの宝庫


現在は二連の店蔵が連なり、上店の奥は座売りの間、その正面奥は衣裳展示場である江戸期の土蔵「染織館」が続く。下店の暖簾をくぐると蔵のギャラリー「綿幸サロン」があり、石畳の路地の奥は三階蔵造りの母家に続く。間口が狭く奥が深い、城下町の商家の特徴を色濃く残す造りだ。

綿幸サロンは時期ごとに企画展も開催



綿幸サロン1Fではガレのランプや絵画、陶器などの展示・販売、2Fでは古くから伝わる雛人形や、商売で使用されていた道具などを展示。そこで連続テレビ小説「カーネーション」のポスターに掲載されているミシンと同じものを発見!ドラマのモデルとなったコシノ3姉妹の次女・コシノジュンコ氏は、須坂市出身で多数の一流デザイナーを育て上げ「日本ファッション界のゴッドマザー」と称される小池千枝氏の教え子の一人。そのつながりで、たびたび須坂を訪れているそう。

連続テレビ小説「カーネーション」のポスターに登場するミシン 

コシノジュンコ氏デザインの着物は引き算の美学が光る逸品



保存修景の先駆者


店主の中野さんは東京で学生時代を過ごし、見習い期間を経て須坂に戻ってきたのは1981(昭和56)年、25歳の頃だった。だんだん活気がなくなっていく町をなんとか元気にできないかと考えていたところ、歴史を活かしたまちづくりに取り組んでいる団体によるNPO「全国町並み保存連盟」に出会う。須坂の町を見に来てもらったところ、「古い町並みが連なって残っているのはすごい!」と絶賛されたそう。そこで地元で仲間を募り「信州須坂町並みの会」を結成。当時は瓦屋根の伝統的な建物のファサードを看板などで隠し、ビル風に見せることが流行っていたが、看板を外して元の外観に戻すなどの活動を始めた。現在の蔵の町並みはこの会の活動の賜物だ。

店主の中野博勝さん



町再生のヒーロー 二宮尊徳


店の入り口にある小さな二宮尊徳(金次郎)像。「勤勉」の象徴というイメージが強いが、尊徳が町の再生にも大きな功績を残したことはあまり知られていない。大名旗本等の財政再建と領民救済で素晴らしい成果をあげ、再建を手がけた村は600ヵ所以上。また、藩の使用人や武士たちがお金を貸し借りできる「信用組合」のような仕組みを作っていたのは驚きだ。自ら事業を行い、生涯に渡り地域の再生に尽力した尊徳に感銘を受け、像を設置しだそう。

店のどこにいるか探してみよう



着物を楽しめる場としてお茶会やコンサートをたびたび開催する他、着付け教室も行っている。これから着付けを学びたい人も、着付けはできるが着る機会がないという方も、ぜひ着物の楽しさに触れてみては。


綿幸

所    長野県須坂市中町218/ TEL 026-245-0218

OPEN   9:30〜18:30/ 定休日 水曜

HP   https://www.watako.com/


<着付け教室>

毎月第二・第四金曜日 13:30〜15:00

持ち物 着物・帯・着付け小物一式

※上記以外の日時でも対応できる場合がございますので、お問合せください

The secrets of SUZAKA

信州・すざかのないしょ話